| 研究概要 |
本研究では、スピンを炭素ケージ上に有するLa内包フラーレンと内包原子に有するN@C_<60>に着目して研究を行っている。これらは、ナノ磁性体の構築素子として多分野から注目を集める一方で、その合成・単離の困難さからその構造や物性はほとんど明らかにされていない。前年度までに、申請者は金属内包フラーレンの発見当初より抽出が困難であるとされていたLa@C_<74>を誘導体として抽出・単離し、構造解析及び物性解明に成功している。また、窒素内包フラーレンについては、研究を遂行するにあたり解決すべき課題であるN@C_<60>の大量合成法の確立に成功している。
本年度は、これら未開拓であった常磁性内包フラーレンの構造決定と物性解明を目的として、以下の2つについて研究を行った。
1,La@C_<72>誘導体の単離及び構造解析
金属内包フラーレンの発見当初より抽出が困難であるとされていたLa@C_<74>と同様にLa@C_<72>もMissing metallofullereneとして未だに抽出・単離された報告例はない。特にLa@C_<72>は、理論計算により孤立五員環則を満たさない(non-IPR)構造が示唆されていることからその構造は大変興味深い。また、non-IPR構造を有するフラーレンは、IPR構造のものとは物性が異なることが示唆されており、構造だけではなく物性の点からも注目される。本年度、申請者はLa@C_<72>を誘導体として抽出・単離し、その単結晶X線構造解析と物性解明に成功した。
2,N@C_<60>の構造解析と物性解明
N@C_<60>は量子コンピューターの基本素子としての応用が期待される一方で、その絶対量の少なさからN@C_<60>の物性はほとんど解明されておらず、応用化に向けた大量合成法の確立と物性解明は課題である。本年度、申請者はプラズマ放電法によるN@C_<60>の大量合成と濃縮を行うとともにEPRなどを用いた特性解明を行なった。
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