本研究では、常磁性分子であるLa内包フラーレンとN@C_<60>に着目して研究を行った。これらは、ナノ磁性体の構築素子として多分野から注目を集める一方で、その合成・単離の困難さからその構造や物性はほとんど明らかにされていない。前年度までに、申請者は金属内包フラーレンの発見当初より抽出が困難であったLa@C_<72>、La@C_<74>、La@C_<80>を誘導体として抽出・単離し、構造解析及び物性解明に成功している。また、N@C_<60>については、大量合成法の確立に成功し、単離とLFP測定を行い、特異的な光物性を明らかにした。本年度は、このような未開拓であった常磁性内包フラーレンの更なる構造決定と物性解明を目的とするとともに、機能性材料の開発を目指し、以下の2つについて研究を行った。 1.La@C_<82>の第3の異性体の抽出と構造解析 金属内包フラーレンにおいて、La@C_<82>は特異的に有機溶媒中へと抽出されることから活発に研究されてきた化学種である。これまでに2つの異性体が報告され、最近では化学修飾や超分子化学を用いたLa@C_<82>の機能化も報告されている。一方で、理論計算によりLa@C_<82>には更に異性体が存在する可能性が示唆されていた。申請者はLa@C_<82>の新たな異性体を誘導体として抽出・単離することに成功し、単結晶X線構造解析によりその構造を明らかにした。 2.ナノロッドの創製を目指した単結晶の作成と構造・物性解明 フラーレンの自己組織化により生成するナノロッドやナノ結晶は、バルク固体や溶液状態では発現しない構造や物性が期待され、フラーレンを用いた機能性材料創製において重要な役割を果たすと考えられる。しかしながら、それらの結晶構造や物性はほとんど解明されていない。本年度、申請者は内包フラーレンもしくは誘導体と有機化合物との共結晶を作成し、単結晶X線構造解祈によりそれらの結晶構造を解明した。
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