研究概要 |
ウエストナイルウイルスはフラビウイルス科、フラビウイルス属に属するウイルスであり、日本脳炎ウイルスやデングウイルスと同族である。 本研究では、分子生物学的手法を用いたウイルス病原性の分子機構解析により、ウエストナイルウイルス感染症の予防法と治療法の新たな標的を探索することを目指す。 1、ウイルス蛋白質に特異的なポリクローナル抗体の作成: 今年度は、分子生物学的解析に必要不可欠である抗体の作成を行った。ウエストナイルウイルスの構造タンパク質であるC, M, Eに関しては市販抗体が存在するが、非構造タンパク質の抗体は存在しない。そこで、それぞれの蛋白質の一次構造から、エピトープとして最適な部位を選び出し、ペプチドを合成しウサギに免役して坑血清を得た。その結果、NS1,NS2B, NS3,NS4A, NS5に対する特異抗体が得られた。 2、ウイルス粒子形成解析のための蛍光プローブ作成 フラビウイルスは、X線結晶構造解析や凍結電顕などの手法により、ウイルス粒子の構造解析が進んでおり、数多くの仕事が報告されている。しかしながら、ウイルス粒子がどのように細胞内で形成され、放出されるかについては、不明な点が多い。近年、HIVの研究で注目されているように、ウイルスの放出機構の解明は、新たなウイルス治療薬の標的を見つけ出すという観点から重要である。そこで、ウイルス粒子形成に及ぼす因子の検索を目的にウイルス粒子の形成を簡単に検出できる実験系の構築を試みている。方法としては、粒子を形成する主要なウイルスタンパク質であるEタンパク質に蛍光タンパク質を融合させ、蛍光顕微鏡によりウイルス粒子を検出するというものである。今年度は、いくつかのプローブを作成したが、未だ野生型と同様の粒子形成能を有するプローブは見つかっていない。今後、さらに方法を変えプローブを作成していく予定である。
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