ウエストナイルウイルスはフラビウイルス科、フラビウイルス属に属するウイルスであり、日本脳炎ウイルスやデングウイルスと同族である。本研究では、分子疫学的、分子生物学的手法を用いたウイルス病原性の分子機構解析により、ウエストナイルウイルス感染症の予防法と治療法の新たな標的を探索することを目指す。 1、ザンビアにおけるフラビウイルス(ウエストナイルウイルス)のサーベイランス: 北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの海外拠点が設置されているアフリカのザンビア共和国の野生動物において、人獣共通感染症の病原体の一つとして重要なウエストナイルウイルス及びその他のフラビウイルスの保有状況を把握するためにフルーツコウモリ等の野生動物のサンプリングを行った。今回は、フルーツコウモリ群生地として世界的に有名なカサンカ国立公園にて計104個体のフルーツコウモリを採取した。血清の採集した後、ザンビア大学獣医学部内のP3施設内にて解剖を行い、各臓器をサンプリングし、さらにRNAの抽出を行った。今後、このサンプルを用いてフラビウイルスの感染の有無を検討していく予定である。 2、ウイルス粒子放出に関わる宿主因子の同定 フラブウイルスのウイルス粒子は、小胞体の膜上で出芽し、細胞に内在する分泌経路によって細胞外へ放出されるとされている。細胞は、様々な小胞輸送経路を持っていることが最近の研究により明らかになってきているが、この研究ではフラビウイルス粒子がどのような細胞内輸送経路を利用しているかを決定することを目的としている。これらの経路を同定するためにウイルス偽粒子を安定的に発現する細胞株を樹立し、その細胞と小胞輸送に関わる分子のsiRNAライブラリーを用いてフラビウイルス粒子の放出に関わる宿主因子の同定を試みた。スクリーニングの方法は、フラビウイルスのEタンパク質を認識する抗体を用いたSandwich ELISとウエストナイルウイルスのVLPを作成するシステムにより行った。その結果、小胞輸送関連タンパク質であるrabファミリーに所属する分子を同定した。今後、この分子がウイルス感染に与える影響を検討し、結果をまとめて報告する予定である。
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