今年度は、20世紀初頭のドイツに成立した文筆家の職業団体「ドイツ文筆家保護連盟」(Schutzverband Deutscher Schriftsteller:略称SDS)の活動史を通時的にたどり、出版・印刷業が近代的な文化産業として確立していく中で顕在化した当時の文筆業をめぐる諸問題を社会文化史的な観点から考察を行った。研究成果は、随時、6月の全国学会、12月の雑誌論文で発表・掲載し、これまでの研究を12.月の博士論文でまとめることができた。 本研究を概括すると、SDSの綱領パンフレット『商品としての文学』("Literatur als Ware")、機関紙『文筆家』"Der Schriftsteller")に掲載された活動報告、第一次世界大戦中にSDSによって刊行された『ドイツ兵士の本』("Das deutsche Soldatenbuch")および『SDSの戦争ファイル』("Kriegsmappe des SDS")を中心的に取り上げ、世紀転換期からワイマール共和国期に至る政治・経済・社会情勢の変動を視野に入れながら、SDSの活動を実証的に分析・記述することである。「文学の商業性」、「職業としての文筆業」、「文筆家労働組合の誕生」、「著作権」、「検閲」、「ナショナリズム」といったテーマが主要な考察対象となっており、本研究は、従来の文学研究では等閑視されてきたような文筆活動の隠れた局面を明らかにしようとするものである。 本研究を概括すると、SDSの綱領パンフレット『商品としての文学』("Literatur als Ware")、機関紙『文筆家』"Der Schriftsteller")に掲載された活動報告、第一次世界大戦中にSDSによって刊行された『ドイツ兵士の本』("Das deutsche Soldatenbuch")および『SDSの戦争ファイル』("Kriegsmappe des SDS")を中心的に取り上げ、世紀転換期からワイマール共和国期に至る政治・経済・社会情勢の変動を視野に入れながら、SDSの活動を実証的に分析・記述することである。「文学の商業性」、「職業としての文筆業」、「文筆家労働組合の誕生」、「著作権」、「検閲」、「ナショナリズム」といったテーマが主要な考察対象となっており、本研究は、従来の文学研究では等閑視されてきたような文筆活動の隠れた局面を明らかにしようとするものである。 本研究の成果は、従来の作家・作品論を中心とした個別研究あるいは文学史記述では全く取り上げられてこなかった作家の職業団体としての動態に着目し、文学活動を<経済的な営為としての文筆業)という視座から捉えた点にあると考えている。単にひとつの文筆家団体の活動史を実証的に再構成するだけではなく、その成立から解体に至るまでの過程において顕在化した、文学作品のもつ「商業性」と「芸術性」をめぐる論争、文筆家のアイデンティティと社会的なステイタスの問題、映画、ラジオなどのマス・メディアとの関係、出版産業・市場との関係、著作契約と報酬、公権力による「検閲」の問題等、これらの文筆活動に伴う根本的なテーマを具体的に論述した。 また、本研究の考察対象となったSDSは20世紀初頭に成立し、ナチスの権力掌握とともに解体された文筆家団体であるが、この団体の足跡は、戦後のドイツにおける文筆家の組織的な活動にも影響を及ぼしており、そこに本研究成果の現代的意義を認めることができると考えている。 今後は、博士論文でまとめたSDSの活動史の中から、ワイマール共和国期における映画・ラジオなどのマス・メディアと文筆家の関わり、SDSの活動全体を通して特に組織活動の主柱であった「検閲」闘争に着目して論文を掲載していく。さらに、1933年の組織解体以降、フランスのパリでSDSの亡命分派が成立した団体「亡命におけるSDS」(SDS im Exil)の活動を追い、これまでの亡命文学研究において新たな視座を確立したいと考えている。
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