本年度は、前年度に引き続き、Helmut Abels(MPI MIS)との共同研究により空間方向で粘性係数が変化するようなStokes型のレゾルベント方程式について、従来定数係数の場合に知られていたことの類似が成り立つかどうかを調べた。粘性係数はある正の定数より大きいと仮定し、粘性係数と領域の境界の滑らかさが低い場合に結果を得ようと試みた。また、領域は有界領域および外部領域を含むような非有界領域を考え、境界条件は、一部でDirichlet、一部でNeumanであるような場合を考えている。具体的には、対応する作用素(=変数粘性係数Stokes作用素)が解析半群を生成し、H^∞-calculus型の評価を満たすことを示した。証明の手法には、L..Boutet de Monvel('71)とG.Grubbによる境界がある場合の擬微分作用素の理論をH.Abels('05)が係数が滑らかでないような場合に拡張した理論を用いている。さらに、境界の滑らかさが低い場合を扱うためK.Schumach('07)の論文で使用されている、摂動半平面から半平面への変数変換をL^pの設定に拡張したものを用いている。 変数粘性係数Stokes作用素の定義は、定数係数のStokes作用素を扱ったGrubb-Solonnikov('91)の方法を参考にして行った。この研究から、対応する時間依存型の変数粘性係数Stokes方程式の時間有限でのL^p-L^q最大正則性が示され、その事実がさらに非ニュートン流体の自由境界問題などに応用を持つことが期待される。本研究は、"On Stokes operators with variable viscosity in bounded and unbounded domains"という題で学術誌に本年度の3月中に投稿予定である。
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