研究課題
研究目的本申請研究では、疾患細胞ミトコンドリア(Mt)を標的とした新規送達システムの開発を目的とする。研究戦略は、細胞膜とMt膜を突破するために、エンベロープを多重構造にする(多重型・多機能性ナノ構造体:多重型MEND)。外膜には癌細胞の標的に用いられるトランスフェリン、内膜にはMt移行性ペプチド(MTS)を付加し、ナノ粒子のまま癌細胞のMt内へ送達するシステムを開発する。細胞膜、ミトコンドリア膜は膜融合を介して突破する。現在までに、MTS修飾MENDの構築とその評価を行ったので、ここで報告する。(1)MTS修飾MENDの構築1)MTS脂質誘導体の合成を行い、質量分析により目的産物が得られた事を確認した。2)MTS修飾MENDの構築:MENDにMTS脂質誘導体を導入した構造体の調製に成功した。(2)ミトコンドリア移行能評価蛍光標識を施したMENDをHeLa細胞ホモジネート溶液に加え、Mtと結合したMENDの蛍光強度を求めた。R8(今まで用いていたMt結合素子)を修飾したMENDを用いた場合には、10%程度の移行が確認された。一方、MTSを修飾した場合には、移行率が劇的に上昇し、従来のキャリアよりも5倍以上の移行量が確認された。(3)MTS修飾MENDの細胞内動態観察本実験では、GFPを封入した各種MENDを細胞に添加し、その細胞内動態を共焦点レーザースキャン顕微鏡によって観察した。R8(細胞導入素子)-LPを用いた場合、内封物質GFP単独のドットが多く観察された。MTS-MENDを用いた場合には、キャリアの細胞導入量が極めて低くGFPはほとんど観察されなかった。一方、R8&MTS-MENDを用いた場合、GFPの多くがMtで観察された。以上の結果より、R8とMTSの両修飾が、細胞内Mtへの選択的送達を可能とする事を明らかとした。
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