研究概要 |
本研究は、分子気体力学の気液界面の境界条件中に含まれる未知パラメータである凝縮係数の値を分子気体力学の数値計算と衝撃波管を用いた実験により決定し、気液界面の境界条件を確立する事を目的としている。本研究を行う事で、気液界面で弱い凝縮(気液平衡状態からのずれが小さい場合の凝縮現象)が起こっているとき、その気体の凝縮過程によって質量、運動量、エネルギー交換がその界面でどの程度行われているか、分子気体力学の枠組みのみで正確に知る事ができるようになる。 ここで、本年度の研究実施計画は 1.分子気体力学を用いた数値解析法の開発・高効率化・高精度化。 2.衝撃波管の実験より得られる液膜成長のデータ精度の向上とそのデータ解析法の改良。 3.1と2を用いたメタノールの凝縮係数決定の確立。 4.3で示した方法を用いて,水の凝縮係数決定法の確立。 であった。 本年度、研究計画の1〜3に該当するメタノールの凝縮係数決定法の確立を行った結果、常温でのメタノールの凝縮係数は、気液平衡状態では蒸発係数の値(0.9程度)となり、気液非平衡状態になるにつれて小さくなっていくことがわかった。また、研究計画の4に該当する水の凝縮係数決定法の確立を行った結果、常温での水の凝縮係数も気液平衡状態では蒸発係数の値と等しくなり、気液非平衡状態になるにつれて減少し、さらに、この減少傾向はメタノールの場合とほぼ等しくなることがわかった。 本研究結果より、メタノールと水の弱い凝縮現象が起こっている状態での広範な工学的問題に対する定量的に正確な答を求めることが可能となった。この意味において、本研究は流体工学への極めて有意義な貢献を成しえたといえる。 本年度、本研究成果は国際会議で1回、国内学会3回発表され、その内日本熱物性学会主催の「第27回日本熱物性シンポジウム」においてベストプレゼンテーション賞を受賞した。
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