今年度は、昨年度に実施した研究を土台として、引き続き排出権取引に関する分析を主に進めた。今年度の課題の1つとして排出権取引モデルの中に諸制度を導入することがあり、これはモデルで想定する取引をより現実に近づけるためのものである。そこで、排出権取引に投機的な取引参加者が存在するケースや罰金制度を導入するケースを考え、それらの存在が取引(価格、量、金額など)に与える影響について分析を進めた。また、経済学的な分析にマルチエージェントモデルを用いることに理論的根拠がないと批判が聞かれるため、マルチエージェントモデルを排出権取引分析へ応用することの有効性を示す分析を行った。これは、マルチエージェントモデルと従来型の分析モデルで実際の排出権取引をシミュレートすることで前者の有効性を示すものである。 今年度に論文誌に投稿し、また国内学会および国際会議で発表した研究成果は、主に昨年度の後半から今年度の前半に実施したものであり、マルチエージェントモデルと従来型分析手法の比較結果や上述した分析の結果の一部についてである。 本研究の課題としてはエージェント(国、企業、個人など)の意思決定や学習システムの現実との比較や詳細化が挙げられるため、今後は今年度までに構築したモデルを精緻化し、分析を深めていく予定である。また、今年度の研究により得られた結果でまだ論文として投稿していないもの、あるいは学会発表を行っていないものに関しては、随時、投稿や報告を行っていく(一部、投稿中や学会発表が決定しているものもある)。
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