研究課題
メタン生成古細菌は嫌気的有機物分解の最終ステップを担う重要な微生物群である。従って、これらメタン生成古細菌を環境中から分離しその詳細な生理学的特徴を明らかにすることは重要な課題の1つである。我々はメタン生成古細菌の中でも水田土壌中に優先的に存在し、水田土壌からのメタン生成に大きく関与しているといわれているRice Cluster I (RC-I)と呼ばれるグループに注目し研究を進めている。そして先の研究において、それまで分離株の報告がなかったRC-Iグループに属するメタン生成古細菌SANAE株を分離することに成功した。本年度は分離した新規なメタン生成古細菌の生理学的特徴の決定を行うとともに、RC-Iグループに属するメタン生成古細菌をさらに分離するため既存の集積培養系内からRC-Iグループに属するメタン生成古細菌の分離を試みた。SANAE株の菌学的特徴の決定を行った結果、運動性のない桿菌で、水素およびギ酸を基質として利用可能であり、至適生育温度は37℃、至適生育pHは7であった。分離株の16S rRNA遺伝子のほぼ全長を決定し分子系統解析を行った結果、Methanomicrobia綱に属する目レベルで新しいメタン生成古細菌であることがわかった。以上の結果から、本分離株を新目を代表する新属新種のメタン生成古細菌として提案する予定である。また、RC-Iグループに属するメタン生成古細菌をさらに分離するため、既存の集積培養系からの分離を試みた。集積培養系内には多数の細菌が混在していたが、抗生物質を添加した希釈培養を繰り返す事により新たにRC-Iグループに属するメタン生成古細菌のほぼ純粋な培養系を得る事に成功した。今後はこの培養系内から純粋株を分離するため固形性培地を用いた培養手法を試みる予定でいる。
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International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology. (印刷中)
水環境学会誌 Vol.129
ページ: 389-397
11th International Symposium on Microbial Ecology-ISME
ページ: A485
ページ: A167