研究概要 |
数学基礎論の一分野である2階算術の諸体系についての研究,特に逆数学プログラムへの寄与を目的とした研究および,算術の体系のモデルについての研究を行った. 逆数学に関する研究では,咋年の研究で得られていたACA_0において超準解析を用いる手法,およびこの手法を用いて得られたリーマンの写像定理とACA_0の同値性について,結果を整理し,論文として投稿し論文誌への採録が決定した.また,これらの結果については,短期共同研究「算術体系の証明論」,および,数学会数学基礎論および歴史分科会において発表した. また,坂本伸幸氏の示したWKL_0における超準解析を用いたJordan curve theoremの証明について,見通しの良い別証明を与え,坂本氏との共著論文にまとめて投稿誌,論文誌への採録が決定した. この他,解析や代数の基礎的な問題に対して,逆数学の立場からの考察を行い,代数の分野に関しては,佐藤隆氏および山崎武氏との共同研究において,群論の基礎についてのいくつかの逆数学的結果を得た. 2階算術のモデルについての研究では,Cholak, Jockusch, Slamanの論文の中で提示された,算術の各体系間の保存性とモデルの性質についての問題「二つのII^1_2-理論T_1,T_2が理論T_0のII^1_1-保存的拡大であるとき,T_1+T_2もII^1_1-保存的拡大になるか?」について考察し,これを肯定的に解決した.この結果については,数学基礎論若手の会,および,数学会数学基礎論および歴史分科会において発表した.また,この問題に関連して,理論間の保存性が成り立っているとき,それらの理論のモデルにどのような関係があるかについてさらに考察を進めている.
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