本年度は、2か年の研究計画における最終年である。年度計画としては、昨年度に引き続き、資料の収集を進めた。また、昨年度実施した海外現地調査および資料収集の結果を踏まえ、それらを分析して研究成果としてまとめた。そのため、本年度は研究成果を発表するために学会・研究会における口頭発表と学術論文の執筆を優先的に行なうことに重点を置いた。具体的には、北海道大学スラブ研究センターおよび東北大学東北アジア研究センターにおいてそれぞれ研究課題に該当するテーマの口頭発表を行なったほか、ロシア・東欧学会の学会誌『ロシア・東欧研究』に学術論文を投稿し査読の結果、受理された(2008年3月発行予定)。研究の概要は以下の通り。 これらの研究の目的は、1920-30年代のウズベキスタン言語政策の過程における母音調和法則の扱いの変化を歴史的に解明し、それが当時のウズベキスタンの文化および社会にいかなる影響を与え得たのかという問題を明らかにすることである。その際、現地は中央政権(モスクワ)の意向に従ったというだけの単純な枠組みにはせず、ウズベク語およびロシア語の一次資料を用いながら、現地においてこの問題についていかなる議論があり、中央の意向をいかに理解し受容していったのかという点を明らかにすることを試みた。また、マル主義と呼ばれて新興共和国における民族起源を求めた当時のソ連邦の特徴的な学術研究の動向と比較しつつ、当時の言語政策に投影された言語観や言語理念がどのような位置づけをなされるべきかを論じた。
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