研究課題
18年度は、研究課題であるスラブ内地震の発生機構への理解が幾分と深まった。報告者は、脱水不安定説というスラブ内地震の発生原因に関する仮説を検証する研究を、地震活動を詳細に調べることにより行っている。今年度は、スラブ内地震のうち二重深発地震面上面に注目し、上面内の震源をDouble Difference震源決定法をもちい再決定、結果を検討した。それにより、上面における地震活動の空間分布の深さ下限と、実験や数値計算を基にした岩石学において予想される相境界がほぼ一致することを発見した。また、従来の研究において火山フロント付近下の上面の地震活動に一部見られていた正断層の地震が、その相境界にそって分布することを発見した。この成果は、岩石学により予想されていた脱水を伴う相境界の存在を示唆しており、脱水不安定説を支持する結果となる極めて重要な結果である。また、地殻上部における地震活動は、スラブの伸びる方向沿って相境界に向かって活発になり、相境界(jadeite lawsonite blueschistからlawsonite amphibole eclogite)を通り越すと地震活動が消滅することを発見した。この結果は海洋性地殻の上部と地殻の下部の構造が異なることを示唆する。これらの結果は、雑誌発表2,3にまとめ、国際誌(GRL)に受理されている。今年度の学会発表においては、国内外に積極的に成果をアピールできることが出来た。特に、米国地球物理学連合秋季大会においては、同連合の発行する国際誌にて論文(学会誌等の発表2)を中心に発表したところ、海外での沈み込み帯に関する一流研究者(Silver博士など)より報告者の成果を高く評価された。共同研究者である米国地質調査所カービー博士とは、博士の来日と報告者の3週間に及ぶ渡米中に議論をすすめた。それにより、報告者は地震学的研究成果の解釈に岩石学的知見を取り入れることが出来、雑誌発表2,3を行うにいたった。このように、今年度の実績は、地球科学の知識を総合的に使ってスラブ内地震の発生機構を理解するのに貢献する内容になった。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
Geophysical, Research. Letters (印刷中)
月刊地球特別号 今北海道東部で何が起こっているか? Vil.28, No.7
ページ: 484-494
Geophysical, Research. Letters Vol.33, L24310
ページ: doi:10.1029/2006GL028239