研究概要 |
本研究は地球表層システムの進化と変動を解明するために,顕生代史上最も温暖化が進んだ時代の一つである白亜紀"温室期"の陸域気候帯分布および大気循環システムの復元を目的としている. 平成19年度はモンゴルの陸成上部白亜系の層序統合をほぼ完了し,また同地域で始めて詳細な古地磁気層序を確立し,モンゴル陸成層の詳細な年代層序を確立した.更に同研究を通じて,砂漠堆積物が過去の亜熱帯高圧帯の分布とその変遷を最も直接的に記録していることを見出し,アジア他地域(タイ・コラート盆地や中国・四川盆地)で地質調査を展開する事により,下記のように白亜紀を通したアジア内陸の時空的な陸域気候帯の変遷,そして亜熱帯高圧帯の緯度方向の急激なシフトが明らかになった. (1)白亜紀前期には,中国北部(オルドス盆地やタリム盆地)は砂漠環境が広がり,乾燥気候下にあった.白亜紀中期には,モンゴル南部ゴビ盆地および中国北部オルドス盆地では湖や湿地帯の環境が広がり湿潤気候下にあったが,同時期に中国南部(四川盆地や思茅盆地)やタイ北部のコラート盆地では砂漠環境が広がり乾燥気候下にあった.白亜紀後期には,モンゴル南部ゴビ盆地や中国北部(オルドス盆地やスベイ盆地など)で広域的に砂漠環境が広がり,乾燥気候下にあった.すなわち,白亜紀を通してアジア内陸の亜熱帯乾燥域が緯度方向の急激なシフトをしていたことが明らかになった. (2)砂漠堆積物分布からみる亜熱帯乾燥域の時空変遷だけでなく,砂漠堆積物中の大型斜交層理構造から復元される古風向パターンを解析することにより,白亜紀を通して亜熱帯高圧帯が緯度方向に急激にシフトしていた事が明らかになった.すなわち,白亜紀前期および後期には亜熱帯高圧帯が現在よりも高緯度側にシフトしており,一方,白亜紀中期には亜熱帯高圧帯が現在よりも赤道側にシフトしていたという結果が得られた.
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