研究概要 |
(1)Pt(II)環状ホスト錯体とPt(IV)ゲスト錯体との混合原子価型交互集積体の構造と電荷移動バンド構造の詳細、および複合化機構の解明を行った。その結果この階段状複合集積体は、従来の単核の無限一次元鎖の集積体では生じ得なかったPt(II)…Br-Pt(IV)-Br…Pt(II)という最小繰り返し単位の構造が孤立して存在しており、これに由来する単位あたりの電荷移動吸収や光学伝導度を見積もることに成功した。これは、本研究において初めて導入された「環状」集積ユニットが生み出したまったく新しい現象であり、構造と電子系の次元拡張へと展開が進みつつある昨今の擬一次元ハロゲン架橋鎖状錯体の研究の動向においても画期的な例である。またこの階段状集積構造は、自己組織化の足場として、CH-π相互作用に基づくホスト:ゲスト=1:1の包接過程を経ることを見出した。共に正電荷を持つホスト-ゲスト錯形成において、電荷反発やエンタルピー損失を補い安定化するために、静電的ではなく比較的弱い相互作用が大きく寄与したことは、超分子の分子間相互作用の観点からも大変興味深い。現在、これらの研究成果を投稿準備中である。 (2)環状四核錯体の分子設計を一次元集積ユニットとして最適化するため、Ptの配位子をethylenediamineから(1R,2R)-cyclohexanediamineへ変換したところ、それ自身がカラム状に集積する性質を持つことが明らかとなった。X線構造の晶系はTetragonal、空間群はP4_2/nmcである。このような高い対称性を獲得した要因は、従来分子が全体として親水的構造であったのに対し、今回の環状錯体ではジアミンの外側に大きく張り出した環状アルカン部分が疎水基として働き、親水/疎水領域が効果的に区分されて分子間水素結合に一定の秩序が与えられた結果であると考えられる。
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