昨年度に見出したCW型細胞質雄性不稔イネに対する稔性回復遺伝子Rf17は、RMSと命名した遺伝子の発現抑制アリルであることを明らかにした.RMSプロモーターにmRFPを融合して発現させたところ、Rf17アリルでは発現が見られないのに対し、稔性回復能を持たないrf17では発現が見られた事がらRMSはプロモーター領域のSNPによって制御されていることが明らかになった.RMSタンパク質の機能は不明であるが、ミトコンドリアに局在していた.CW細胞質雄性不稔性の原因であると考えられるCW-ORF307とRMSが同時にミトコンドリアに局在する事が雄性不稔性の原因であることが考えられた. 一方、昨年度までの解析で、DCW11というミトコンドリア局在のprotein phosphatase 2C(PP2C)タンパク質がCW細胞質雄性不稔性に深く関わっていることを見出していた、今年度の解析でDCW11は実際にPP2C活性を持ち、DCW11-binding ADP-ribosylation factor(DBA)という因子と結合することが明らかとなった.また、DCW11の抑制は核コードのAOX1a遺伝子の発現を増加させ、CW細胞質雄性不稔系統におけるDCW11過剰発現はAOX1aを抑制した従ってDCW11はCW細胞質雄性不稔性に深く関連しており、AOX1aの発現制御メカニズムに関してはミトコンドリア-核間の新規シグナリングが関連しているものと考えられた.
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