日本学術振興会にて採用された研究実施計画「発達から見た教育関係性考察」に則り、本年度は、主に執筆活動に重点をおいて活動した。 修士論文で用いたシュタイナー理論に基づいた教育関係論の焼きなおし、同じく用いた茶の湯における師弟関係論の焼きなおしから見出された結果を学会発表した。さらにそれをもとに論文化を試みた。 また、「守破離」の概念への更なる踏み込みを試み、その法則性を文学作品に見る師弟関係に照らすことから法則の展開を図った。対象として中島敦の作品『名人傳』に見る師弟関係を用いた。この試みについては『名人傳』の表裏一体をなすとされるもうひとつの作品、『山月記』についてさらに構想中である。 茶書研究のひとつとして、千利休による『利休百首』にみる稽古論についても本年度は接近を試みた。これは明確に「守破離」を説くものではないが、その根底にあるわざの展開過程を提示する歌が見られることから、そこに「守破離」概念を抽出する可能性を見た。 今後も茶書から、「守破離」の根幹をさぐる予定である。具体的には、近代以前、つまり近世期にみる茶書からその稽古論を見出すことを検討中である。これまで焦点としてきた師弟関係を軸に、(1)茶書に見る師弟関係、(2)師弟関係の連続性と不連続性、(3)江戸中期の時代性、(4)芸道の「道」性という要素から構成した見地から、師弟関係の概念に接近を試みる予定である。(3)にあたる、江戸期の時代性以外は、本年度からの延長である。代区分を理解するためにも、時間はかかるが近世理解を深めたい。方法として、まず江戸中期に限定した茶の湯の原典として茶書、稽古本を考えている。
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