まず、磁気圏尾部磁力線再結合領域における電子のダイナミクスに関しての研究を行った。Cluster II衛星の電子データを利用し、位相空間密度が低〜中エネルギーで一定になる電子の分布関数(flat-top分布)が見える領域の同定と、この分布と高エネルギー電子フラックスとの関係を調べた。その結果この分布関数が磁気リコネクション領域から流れ出るイオン高速流がもっとも加速された、イオン拡散領域の外側の境界付近で主に観測されることが定量的に明らかになった。更にこの分布関数の生成はより高エネルギーの電子の生成とは関連がなく、単一の加速プロセスでflat-top分布と高エネルギー電子の両方を生成することは不可能であり、複数の加速過程が存在する必要があることを示した。 次に、このような磁気リコネクション領域近傍で見られる短時間大振幅磁場変動の性質に関して研究を行った。この変動は高速流の先頭ないしより高速な流れに切り替わる境界、及び地球向き・尾部向きの高速流の問の領域で見られる。磁場の変動パターンは従来の大規模フラックスロープ構造と同一の極性を示すが、従来の30秒以上の観測に比べ4-8秒以内と非常に短く、またしばしば薄い電流層内の磁気中性面付近のみでしばしば観測され、イオン慣性長の数倍から十倍程度の領域的に限られた構造であることが明らかになっている。また、一度の現象に複数個存在することが多く、磁気リコネクションのミクロな現象解明に繋がると期待される。 また、サブストームメジャーオンセット時とPseudobreakupと呼ばれる十分に発達しない小規模オーロラ活動における電流層の発達に関しての研究を行った。その結果後者では従来期待されるような磁気圏尾部でのグローバルな薄い電流層の発達がほとんど見られないにも関わらず、磁気リコネクションオンセットの特性が現れることが示された。
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