研究概要 |
本研究では、海洋生物が環境に対して応答する過程を明らかにすることを目的として、海洋生態系の高次捕食者を対象に、餌環境情報の収集と生物の行動モニタリングを行う.本年度は、キタゾウアザラシ、キタオットセイを対象として調査を行った。 2006年5月,アメリカ、カリフォルニアに上陸したキタゾウアザラシの成熟メスから加速度データロガー、胃内温度データロガー、および衛生発信器を回収した.また、7〜9月、ロシア、北千島列島にて、繁殖期のキタオットセイ成熟メスに地磁気・加速度データロガー、胃内温度データロガー、GPSデータロガーの装着・回収を行った。 この結果、キタゾウアザラシは摂餌の際には急角度で潜降し,さらにヒレを多く動かすことによって,鉛直速度を速めていることが明らかとなり,エネルギー節約よりも,移動時間の節約を優先させていることが考えられた.また,移動の際には浅い角度で潜降して水平移動速度を速めていることが明らかとなった.休息では,ほとんどヒレを動かさないかわりに,鉛直・水平移動速度が遅く,エネルギー節約を優先していることが明らかとなった.以上より,キタゾウアザラシは,潜水の機能によって行動を変化させていることが示唆された.潜水の機能は餌環境によって変化することが予測されることから、今後は、胃内温度、GPSによる回遊経路によって得られた行動情報・海洋環境情報とあわせて解析することによって、環境に対する高次捕食者の応答特性を明らかにする。 以上の成果の一部は、学会および投稿論文にて発表した。また、残りの結果も学術雑誌への投稿を準備中である。
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