研究概要 |
本年度においては、申請書に記載した年次計画の通りの実験を行った。まずこれまでの研究により発見したサリドマイド結合因子THIR1, 2についてcDNA cloningを行った。そして、サリドマイドとTHIR1, 2の結合様式を、それぞれの組換えタンパク質を用いて検証した。方法として、昆虫発現系によりTHIR1, 2の組み換えタンパク質を発現・精製し、サリドマイド固定化粒子を用いた試験管内結合試験に導入することにより、結合を検証した。結果として、THIR2のみがサリドマイドと直接結合するという結果が得られた。次に直接結合することが判明したTHIR2について、サリドマイドの結合領域の決定を試みた。N末部位やC末部位を欠損したような欠損変異体を作成し、それらを用いてサリドマイドとの結合を試験管内結合試験で検証したところ、C末が欠損した変異体においては、結合能が著しく失われるという結果が得られた。 THIR1はこれまでの研究により生化学的に特異的にサリドマイドと結合することが判明していたが、今回サリドマイドと直接結合するか検証したところ、結果は陰性であった。そこで、間接的に結合していることが考えられ、THIR1, 2同士が結合するかを検証した。方法としては、腎臓由来HEK293T細胞において、FLAG-THIR1およびTHIR2-V5-Hisをトランスフェクションし、FLAG免疫沈降を行った。結果として、THIR1とTHIR2は共沈し、相互作用があることが明らかとなった。これは、新規のタンパク質間相互作用の発見であり、興味深いものと考えられる。 上記の実験に並行して、T細胞由来Jurkat株など(以前精製に成功した)HeLa細胞以外の、サリドマイドが作用するとすでに報告された細胞抽出液において、サリドマイド固定化粒子によるアフィニティークロマトグラフィーを行うことにより、THIR1, 2が検出されるかを調べた。結果として、少なくともJurkat,単球由来THP-1,血管内皮細胞HUVEC,多発性骨髄腫株U266においてもTHIR1, 2を検出することに成功した。これらにおいて、THIR1, 2以外の別の結合因子は検出されなかった。
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