今年度は、(1)隣接諸科学による成果の検討、(2)関係史料の収集・整理(デジタルカメラによる写真撮影・パソコンによるデータ処理・収集史料のデータベース化)、(3)学会・学術雑誌での成果発表、の三点を中心に活動をおこなった。(1)は文献史学の研究成果だけでなく、経済学・考古学・地理学など本研究と関わりの深い隣接諸科学の有益な議論を幅広く吸収し、その意義や課題を確認することに努めた。また本研究の主要テーマである屎尿流通以外の地域市場論の吸収も意識的におこなった。(2)は研究課題に沿って地域市場についての史料収集・整理をおこなった。近隣では関西大学文学部、大阪市史編纂所、愛知川町史編さん室など各所蔵機関のほか、遠隔地の国文学研究資料館、国立公文書館、東京都江戸東京博物館、埼玉県立文書館、一橋大学、佐賀大学、熊本大学などで史料閲覧の機会を得た。それぞれ整理・複写・解読・データベース化の作業を実施し、今後の研究に活用できるよう整備している。(3)は地域市場分析の一環から、近世畿内における米穀の問題を論文として執筆した。また(1)と関連して、これまでの先行研究の成果を整理し、近世大坂や畿内・近国にかかわる書籍の書評2本を学術雑誌で発表した。口頭報告は、平成19年5月15日に松代真田家文書研究会で「松代真田家大坂御用場の設置と商品流通」と題した報告をおこない、続けて同年11月10日に明治維新史学会秋期大会で「幕末維新期の大坂御用場-大名・旗本におけるもうひとつの大坂拠点-」を発表した。両報告はともに従来述べられてきた近世大坂蔵屋敷の経済的意義を検証し、本研究のなかでも重要視する地域市場の内実を詳細に検討したもので、今後論文として公表する準備を進めている。
|