本研究の目標はホリゾンタル対称性をもつ超対象大統一模型(特にE6大統一模型)が、近い将来の実験においてどのように検証されうるかについて議論することである。そのためにまず次ページに示した論文において、μ→eγ及びτ→μγの解析を行った。解析の結果、これらの過程が近い将来の実験で観測可能なパラメータ領域が存在すること、また、終状態トプレンの角分布を測定することにより、この模型の特徴を検証できる可能性があることがわかった。 この解析に続いて、この模型の予言するB中間子の崩壊に関するCPの破れについての解析も行った。特にB→φKとB→η'Kの時間に依存するCP非対称性を計算した。これまでこの物理量の標準模型からのずれは、グルィーノ(グルーオンの超対称パートナー)が中間状態に現ける寄与が支配的で、それはヒッグス粒子の超対称パートナーであるヒグシーノの質量に比例していることが知られていた。しかしながら本研究が対象にしている模型ではヒグシーノ質量は大きくできないため一見標準模型からのずれは大きくできそうにない。しかしながら解析の結果、この模型はグルイーノの寄与とチャージーノ(SU(2)ゲージボソンと荷電ヒッグスのパートナー)の寄与がいつでも量子力学的な正の干渉を起こすため、この模型でも観測可能な標準模型からのずれが予言されることを示した。 さらに、現在はこの模型が予言するLHC実験でのシグナルについて研究している。この研究はまだ論文にはなっていないが、いくつかの重要な結果が得られ、春季日本物理学会で発表している。この研究が完成すれば、レプトントン、クォークセクターのFlavor Changing Neutral Current(FCNC)についての予言(精密測定に関する予言)と、超高エネルギー実験での予言(直接測定に関する予言)が揃うことになり、この模型が現実であった場合の検証可能性より強力なものになると考えられる。
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