1.論文誌Cryogenicsへの掲載決定:本研究では、より少ない使用線材で高温超伝導コイルの中心磁界・蓄積エネルギーを向上させることを研究目的としている。そのためには、コイルの臨界電流(高温超伝導コイルに流し得る電流値で、これが大きいほど望ましい。)を向上させる必要がある。通常の矩形断面の高温超伝導コイルは、断面端部の線材の臨界電流が特に小さく、この箇所に比較的大きな電界が発生し、これがコイルの臨界電流の低下につながっている。そこで、この端部の電界発生箇所を切除したコイルを考案し解析した結果、臨界電流および蓄積エネルギー密度が向上することがわかった。これを受けて、切除したコイルについて電界を再度計算し、切除するという繰り返しを合計4回行った。その結果、第3切除コイルにおいて、蓄積エネルギー密度が最大になり、また、使用導体量が20%削減できたにもかかわらず、中心磁界・蓄積エネルギーは減少せず、保持できることを確認できた。 2.論文誌IEEE Transactions on Applied Superconductivityへの掲載決定:臨界電流は、磁界印加角度に依存して減少する特性を持ち、このため、コイルの磁界分布から端部の線材の臨界電流が低くなる。そこで磁界印加角度を積極的に緩和させる、外層端部シフトコイルを考案した。このコイルは、通常の矩形断面コイルの外層端部を部分的に分離移動し、コイル系の磁界分布を変化させ、メインのコイル端部への磁界印加角度を緩和し、コイルの臨界電流を向上させるコイルである。解析を行った結果、コイル断面積の約32%を分離移動した場合において、中心磁界および蓄積エネルギーが最大に向上し、特に蓄積エネルギーは使用線材量が通常の矩形断面コイルと同一であるにもかかわらず、20%向上することがわかった。 以上の研究成果が、上記の各論文誌に掲載が決定した。
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