研究概要 |
飼料生産の場としての草地および放牧地においては,時々刻々と変化する草資源量と牧草成分を広域的かつ定量的に把握する草地診断技術ならびに広大な放牧地に放たれた家畜がどの場所でどれくらい草を食べているのかを広域的に評価する技術の開発が求められる。そこで本研究では,1)多段階観測(マルチステージモニタリング)による草資源量およびその牧草栄養価と2)全地球測位システム(GPS)と家畜用顎運動測定機器による家畜栄養摂取量の広域的評価手法の開発を目的としている。現地調査では,1)草生産性および牧草栄養価の推定のための分光反射計測と,2)GPSおよび加速度センサー(牛の顎運動測定)を利用した放牧期間中の採食行動の識別とその空間的分布の把握を試みた。これらの調査は,北海道農業研究センターの放牧試験区(約12ha)とニュージーランドの草地(Ag Research Grassland Research Centre)で行った。 室内スペクトル実験で開発された新しい波長選択のアルゴリズムを適用して,地表面反射スペクトル(ハイパースペクトル,400-2350nmの波長域)から,混播草地における草量と草飼料価値の指標となるミネラル成分(リン,カリウムなど)とマメ科率の推定に重要な波長がそれぞれ得られた。地理情報システム(GIS)および地理的加重回帰(GWR)を利用して,ニュージーランド高原放牧草地をケーススタディとした牛・羊の放牧行動の空間分布(GPS位置情報)とその意志決定に与える重要な環境要因(草質,標高,傾斜など)および空間的不均一性・依存性を明らかにした。
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