1、目的 植物に複数の外来遺伝子を効率的に導入し、同時に発現させることが可能な多重遺伝子発現系として、当研究室では単一プロモーター・ターミネーターカセットから複数タンパク質を同時発現させるポリシストロニック遺伝子発現系の開発を実施してきた。現在までにウイルス由来のInternal Ribosome Entry Site(IRES)を用いたポリシストロニック遺伝子発現ベクターが高等植物において有効であることを明らかにしている。そこで本研究では、より高性能なポリシストロニック遺伝子発現系の開発のために、IRESに作用する植物細胞内在性因子(IRES trans acting factor:ITAF)の同定を目的とした。 2、平成19年度研究計画 本年度はITAFの同定に向けて、前年度得られたIRES活性変異体の原因遺伝子を、遺伝子マッピングあるいはCandidate Gene Approachにより、同定することとした。さらに同定された原因遺伝子産物についてin vitro翻訳系や一過的発現系等を用いて遺伝子産物の性状に関して詳しく検証を行う予定であった。 3、平成19年度研究実績 前年度得られた3ラインのうち1ラインのIRES活性変異体の解析により、5番染色体の上腕に原因遺伝子が存在することが明らかとなった。現在原因遺伝子の特定に向けて、サンプル数を増やして解析中である。原因遺伝子が存在する5番染色体の領域には、翻訳開始因子などの翻訳に関わる因子が複数存在し、有力な候補遺伝子であると考えられる。しかし最近では、翻訳場所である細胞質ではなく、核内に存在するタンパク質もITAFとしての機能を有するとの見解もあり、より多くの遺伝子を対象として新たな展開が期待できる。
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