ケイ酸塩鉱物からなる固体物質(ダスト)は惑星の主原料のひとつである。若い星のまわりに存在るガスとダストからなる星周円盤において、惑星系形成が進むと考えられているが、惑星系形成に伴ってこれらのダストも、初期の状態から変化・進化すると考えられる。我々は、すばる望遠鏡に搭載した中間赤外線観測装置COMICSを用いた観測により、これらの若い星の周りに存在するダスト進化を観測的に探っている。その結果、円盤の降着活動性が低下するに伴い円盤表層のケイ酸塩ダスト粒子のサイズが大きくなるという観測的傾向を見出した。このことは、円盤内での惑星の材料となるダスト粒子の粒子成長を意味しており、惑星系形成の最初のステップである粒子成長が円盤の降着活動性の進化とともに進んでいることを示す新しい観測的な証拠であると考えられる。 また、本研究では太陽系における星周円盤(原始太陽形星雲)の物質を凍結保存したと考えられる彗星ダストの観測的研究もすすめている。今年度は崩壊しつつある彗星73P・シュバスマンバハマン彗星の地上中間赤外線観測により、彗星核内のダストの均質性について議論した。現在投稿論文作成中である。今後の太陽系外の惑星系形成現場における、結晶化したオリビンの観測の進展により、彗星の観測から明らかになった上記の事実を確認・検証することにより、太陽系・惑星系形成の詳細な物質科学的理解をすすめることが期待される。 我々は原始惑星系円盤の高空間分解能観測も進めており、惑星系を形成しつつある円盤の複雑な構造を映し出すことにも成功している。それだけでなく、円盤の熱的構造についても観測的に明らかにしつつあり、現在アムステルダム大(オランダ)の研究者と共同研究をすすめているところである。
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