大質量銀河の形成過程の解明を目指し、あかり衛星を用いて、北黄極領域における大規模な撮像サーベイを遂行した。観測領域は0.4平方度で、この領域を近-中間赤外線カメラ(IRC)を用いて、2-24μmをカバーする全9バンドで撮像することに成功した。あかり衛星を冷却していた液体ヘリウムが、8月26日にすべて消失したため、我々のサーベイ観測も終了した。 観測終了を受けて本格的なデータ解析を開始した。全部で220回以上の観測結果を集約し、近-中間赤外線9バンドでの全領域のイメージを完成させた。赤外線でこれほど細かい波長間隔の広域撮像をしたのは、世界初である。 初年度に行った、狭い(50平方分)領域での同様の観測結果は、あかり衛星の初期成果論文集の一つとして出版された。この初期成果で得られた天体カタログから、遠方の大質量銀河の候補天体を、あかり衛星の4μmで検出された天体から選定した。この選定には、あかり衛星による近赤外線での色を用いる、独自の手法を用いた。これらの大質量銀河候補の57天体を、すばる望遠鏡の可視分光計(FOCAS)を用いて分光し、その赤方偏移や活動銀河核(AGN)の活動性等を調べた。現在、我々の本観測からの約1000天体のスペクトルを得る、大規模な分光サーベイを提案中である。 また、あかり衛星の特徴的な波長構成は、遠方の特殊な赤外線銀河を発見するのに有効であることを提案し、国際会議、及び、日本天文学会で発表した。これらの銀河では、多環芳香族炭化水素(PAH)からなる微小ダストが特に明るく、銀河の一生のうちで特殊な進化段階にいる可能性がある。その正体については、今後解明していきたい。
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