研究課題
本研究は、細胞内における糖タンパク質の選別・輸送を担うL型レクチンについて精密解析を行うことにより、上記の過程の分子機構を明らかにする事を目的としている。これまでL型レクチンとして、VIP36、VIPLおよびERGIC-53が知られている。前年度の研究では、これらの3種類のL型レクチンの糖鎖結合の特性を高マンノース型糖鎖ライブラリーを利用したフロンタルアフィニティークロマトグラフィー法によって系統的に解析した。これにより、これらのレクチンの糖鎖認識の共通点と相違点を明らかにすることができた。本年度の研究では、これらのレクチンによる標的糖タンパク質の輸送メカニズムの分子基盤を明らかにすることを試みた。そこで、最近明らかとされたVIP36の結晶構造に基づいて部位特異変異導入による解析を行ったところ、L型レクチンの糖鎖認識の作動特性は、類似した立体構造の中のわずか1残基のアミノ酸残基の挿入・置換によって規定されていることを示した。このことはL型レクチンの糖鎖結合の特性を人為的に変換することが可能であることを初めて実証するものである。また、NMR法を用いて糖タンパク質の品質管理システムの破綻がもたらす疾患の発症機構の分子基盤を与えることにも成功した。以上の結果をもとに、L型レクチンは単なる糖タンパク質の輸送を担っているばかりでなく、小胞体とゴルジ体の間のダイナミックなリサイクリングを介して糖タンパク質の品質管理に寄与しているというモデルを提唱した。
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