経皮的胃電図を対象として、人間工学などの分野で、疾病診断・予防、生体状態の推定、製品のヒューマンインターフェイス評価へ応用するための計測方法・評価指標の開発を目的としている。 1.胃電図による身体状態(座位・仰臥位)の評価を目的として、座位・仰臥位時における胃電図・心電図・脈波・脳波の測定を行った。 2.胃電図発生機序の推定のために、胃電図の決定論性の程度の判定を行った。この判定には、Waylandアルゴリズムを用いた。Waylandアルゴリズムは複雑系解析手法で、系のモデルが決定論で記述可能かの定量評価を行うものであり、胃電図解析に用いられた例はない。そこで、このWaylandアルゴリズムを用いて解析を行った結果、胃電図発生機序の数理モデルは決定論的な過程と確率過程の中間的なものであるという結果になった。 3.胃電図による身体状態(座位・仰臥位)の評価のための複雑系解析方法に基づく指標を提案した。その結果、仰臥位測定開始直後30分間の胃電図は、座位および仰臥位測定開始30分以後の胃電図と異なる様相を示した。座位から仰臥位への姿勢変換による血圧変動や体液移動などの影響が30分程度持続するため、胃電図機序のモデル化や安静状態の評価には仰臥位で30分以上安静の後の測定が望ましいことなどが示唆された。 4.Van der Pol方程式で表される微分方程式に周期信号と雑音を重畳することによるモデル式により、胃電図の数理モデル化を行った。3.で提案した評価指標モデルにより生成される時系列および実測胃電図から算出することにより、その両者から得られる評価指標の統計的性質が類似であった。従って、胃電図はvan der Pol方程式に周期信号と雑音を加えたモデル式により記述できることが確認できた。
|