研究概要 |
本年度の研究では,確率モデルと階層ベイズ手法を用い,個人ごとの異質性や時間的な変動など,データ生成の統計的性質が状況によって異なる場合に柔軟に対処しうる学習モデルの開発と応用を行った.応用として,とくに新規な工学問題への適用と,脳機能の計算論的モデル化を行った. 1.異なる統計的構造をもつ複数の予測課題を協調的に解く手法を,ベイジアンネットワークを個々の予測モデルとし,モデル間の類似性をベイズ推定とその一般化に基づき評価することで実現した.提案手法は近年注目を集めるユーザモデリングと協調フィルタリングの2種類の実問題へと適用され,個々の課題が十分なサンプル数を持たない状況においても高精度の予測が実現されることが示された.これらの成果は現在2つの国際論文誌に投稿中である. 2.確率モデルに基づく新たなハイブリッド型協調フィルタリング手法を提案した.提案手法は階層ベイズモデルとして定式化され,個人間の異質性に対処しつつ,ユーザやアイテムの特徴量を加味して協調フィルタリングが実現される.この結果は国際会議にて発表済みである. 3.小脳が実現するとされる複数のモジュールに基づく運動学習の計算論的原理の解明を目指し,確率モデルによるモジュール切り替え型学習・予測制御モデル(確率型モザイク)を提案した.これは制御理論に基づく既存モデル(モザイク)に,統計的推定の視点を取り入れたものである.統計的定式化は,運動学習における不確かさを理論的に扱う上で意義が大きい.この成果は国際論文誌に受理された.
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