研究概要 |
本年度は,価電子制御ノードとしてシリサイドドットに着目し、下記4点に力点をおいて研究を推進した. 1. リモート水素プラズマ支援によるNiおよびPdナノドットの形成 Si-OH終端した膜厚3.5nmのSiO_2膜上に、電子線蒸着法により極薄NiおよびPd膜を形成し、室温でリモート水素プラズマ処理(60MHz-ICP:350W,260mTorr)を5分間施した結果、面密度6.5x10^<11>cm^<-2>の金属ナノドットの形成が認められ、サイズ分布から見積もった平均ドット高さは〜2nmであった。この結果は、水素ラジカル照射により金属原子の表面拡散が促進され、金属原子の凝集が進行したためであると考えられる。各々の金属ナノドットが電気的に絶縁分離していることは、AFM/KFMによる帯電電位評価から確認した。さらに、SiO_2膜上に形成したSi量子ドット上に形成した金属膜に対して、同様の処理を施すことにより電気的に絶縁されたシリサイドドットが形成できることも明らかにした。 2. リモート水素プラズマ支援により形成したNiシリサイドナノドットの化学結合状態および電子状態評価 Si量子ドット上に、EB蒸着により厚さ〜1.8nmのNi膜を形成した後、室温でリモート水素プラズマ処理を施し、その後HF処理による表面自然酸化膜除去と、HCI処理による未反応Ni除去を行った。XPS測定した価電子帯スペクトルを、Ni層および組成の異なるNiSi層の価電子帯スペクトルと比較した結果、リモートH_2プラズマ処理によりシリサイド化したSiドットはモノシリサイド(NiSi)組成になっていることが分かった。さらに、Ni2p3/2およびSi2p信号の角度分解XPS測定の結果から、大気暴露によってNiSiドット表面にはSi酸化層の形成が認められるものの、SiOx/NiSi界面においても、Ni-O結合は検知できなかった。 3. NiSiドット/Si量子ドット積層ハイブリドフローティングゲートMOSキャパシタにおける電子注入・放出特性 多段階電子注入および安定電荷保持の両立が期待できるNiSiドット/Si量子ドット積層ハイブリッドフローティングゲートMOSキャパシタを作製し,電子注入・放出特性を調べた結果,NiSiドット/Si量子ドット積層ハイブリッドフローティングゲートにおける電子電子注入および放出レートがパルスバイアス印加時間に対して段階的に変化することから,NiSiドットの電子注入・放出がSi量子ドットの離散化したエネルギー状態を反映して制限的に進行することが示唆された. 4. Siドット量子ドットへの不純物添加が発光特性に及ぼす影響 不純物添加したSi量子ドット/SiO_2多重集積構造を作製し、ドット内にデルタドーピングしたP及びBが発光に及ぼす影響を調べた結果、Si量子ドット内へのPおよびBのデルタドーピングによって、顕著な発光閾値電圧の低下および発光強度の増大が明らかになった。不純物添加による電流-電圧(I-V)特性変化から、Pデルタドーピングの場合は、電子輸送効率の向上が、Bデルタドーピングの場合は、正孔注入効率の向上が示唆された。 来年度はこれらの結果を踏まえ,価電子制御したSi量子ドット集積構造を作成し,その発光特性および誘電特性の評価により,高効率発光および高速光応答の指針を得る.
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