研究課題
本研究の目的は、インターネットや携帯メールといったコンピュータを介したコミュニケーション(CMC)の利用が、社会的ネットワークや社会生活に与える影響を、マイクロ(個人内情報処理過程)・メゾ(集団・社会的ネットワーク)・マクロ(文化)の各レベルで検討し、その社会的インパクトを統合的な観点から理解することである。本年度は、メゾレベルにおける対面および携帯メールの社会的ネットワークの形成プロセスに焦点を当て、これらのネットワ憎ク構造の縦断的変化を、ネットワークにおける紐帯の非独立性を考慮した指数ランダムグラフ(p*)モデルによって検討した。大学新入生を対象として実施された一年間の縦断調査に関する分析の結果、挨拶などの弱い紐帯で構成される携帯メールの社会的ネットワークでは、対面の社会的ネットワークに比べ、時期を通じて対人関係の集中化が起こりにくいことが示された。一方、相談などの強い紐帯で構成される携帯メールの社会的ネットワークの全体構造は、対人関係の互恵性によって説明される部分が大きく、また関係の初期の段階からクラスター化が進んでいることが明らかにされた。これらの知見は、CMCの利用が弱い紐帯における対人関係の均衡化を促進する一方、強い紐帯における対人関係の選択化を促進していることを意味し、それぞれ異なる形で社会関係資本としての役割を果たしていることを示唆するものである。以上の成果は、国際学会および国内学会にて発表された。
すべて 2007
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Asian Journal of Social Psychology (in press)