研究概要 |
より高い無次元熱電性能指数(ZT)が得られることを期待して,type-Iクラスレート化合物Ba_8Ga_<16>Ge_<30>中のGaをInにより置換し,構造解析を行うとともに,熱電変換特性を温度およびIn添加量の関数として測定した.これは,In原子半径がGa/Ge原子半径よりも大きいため,Ga/In/Geにより構成されるケージ骨格中の内包Ba原子のラトリング運動が増大し,フォノンの散乱効率が上り,格子熱伝導率が低減されるとともに,GaとInはともにIII族元素であり,Baからの電荷移行量がBa_8Ga_<16>Ge_<30>の場合と変わらないので,Ba_8Ga_<16>Ge_<30>と同程度に高いパワーファクターが見込まれるためである. まず走査型電子顕微鏡(SEM)および粉末X線回折によって,type-Iクラスレート化合物相近辺のBa-Ga-In-Ge系の相平衡状態を調べた結果,type-Iクラスレート化合物Ba_8Ga_<16>Ge_<30>に対するInの固溶限は組成式(Ba_8Ga_<16-x> In_xGe_<30>)あたりx≒6であることがわかった.また格子定数はIn添加量の増加とともに増大した.x=0,3,6の試料の電気抵抗率およびゼーベック係数を四探針定常法により,熱伝導率測定を定常法とレーザーフラッシュ法により測定した.In添加材のゼーベック係数の絶対値は,無添加材よりも減少したものの,電気抵抗率は無添加材の約3分の1に減少した.また,格子熱伝導率は無添加材の約半分に低減された.これらの値よりZT値を計算したところ6In添加材は670℃においてZT=1.03の高い値を示した.これは無添加材のZT値(=0.49)の倍以上である.格子熱伝導率の変化は上述した通りケージ構造の膨張,しいては内包原子のラトリング運動の増大によって説明することができ,電気特性の変化はケージ構成サイトのの原子占有挙動により説明することができる.
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