研究概要 |
本年度は、遺伝子工学的・生化学的な手法を用いて回転観察用Foの作成・単離・精製し、リボソームへの再構成法を最適化した。具体的には、以下のような実験を行った。 まず、回転観察用としてFoのc subunitにHis-tag、b subunitにCysを持つ変異体を遺伝子工学的な手法を用いて作成した。その結果、上記のタグを持つ変異体の作成に成功した。 次に、この変異体を単離・精製する方法を検討した。Foの単離・精製法としては、これまで行われてきたFoFlを精製してから低イオン強度でEDTA処理しFl部分を外しFoを回収する方法と、FoFを精製してから高濃度のUreaで処理してFlを解離させてFoを回収する2つの方法が考えられた。そこでこの回転観察用変異体においても上記の2つの方法で単離・精製したところどちらの方法でもFoの単離に成功し、どちらのFoもリボソームに再構成後は野生型と比べても遜色ない高いプロトン透過活性を示した。しかしながら、EDTA処理で精製したFoには少量のFlの混入が見られ完全にFlを除くことはできなかった。この方法ではもう少し条件を検討する必要がある。Urea処理して単離したFoにはFl複合体の混入は見られなかったがFlのsubunitの1つであるγ subunitの混入がわずかだがみられた。 次に精製したFoのリボソームへの再構成法を検討した。様々な脂質の種類や再構成の方法を試したところ、DOPE(Dioleyl Phosphatidylethanolamine)とDOPG(Dioleyl Phosphatidylglycerol)の脂質の組み合わせで凍結・融解を行って再構成したものが、従来行われていた大豆由来のPC(Phosphatidylcholine, asolectin)を用いて透析法で再構成したものよりも高い活性を示した。今回最適化した再構成条件は、再構成にかかる時間(約1時間)も従来の方法(約16時間)より短く簡便で非常に有用である。
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