研究概要 |
本年度は軽い原子核におけるテンソル相関の性質を調べた。研究成果は主に以下の2点である。 1.テンソル相関を記述する核模型の構築 核力のなかでもテンソル力はその寄与が中心力と同程度に強い。しかし従来の原子核模型ではテンソル力が生む強い相関を表現できず、その代わりにテンソル力を中心力に繰り込んできた。本研究では、テンソル相関の物理的性質を調べるために、テンソル力の寄与を有限多体系であらわに記述する新しい原子核模型を構築した。我々は殻模型を基点として、その波動関数に、テンソル力により特徴的に結合する配位をとることで、強いテンソル力を記述できるように拡張した。その結果、テンソル力の取り込みに対して充分な収束性を得ることができ、同時に核構造におけるテンソル力の物理的性質を理解することができた。これにより従来まで困難であった強いテンソル力の記述について、一つの方法論が確立された。 2.中性子ハロー核におけるテンソル相関の役割 本研究では、中性子ハロー構造を呈する^<11>Liとその周辺の原子核(^9Li,^<10>Liなど)におけるテンソル相関の役割を調べた。特に^<11>Liでは、中性子の魔法数8が消滅しているがその機構がこれまでは未解決であった。これに対して我々は、従来まで繰り込む形式で取り扱われてきたテンソル力の効果を、あらわに扱う,ことで魔法数の破れを初めて自然に説明した。同時に最近の観測量であるクーロン分解反応の断面積、及び、基底状態の荷電半径を充分に再現した。
|