これまでに、ポリエステルの原料であるラクトン・ラクチド(環状エステル)を水溶液中でシクロデキストリン(CD)と混合すると、環状エステルの加水分解反応が促進されることを明らかとしてきた。さらに、水などの溶媒を用いず、CDと環状エステルを混合し加熱するだけで、環状エステルがCDに取り込まれて反応し、ポリエステルが生成することを見出した。その際、CDは環状エステルに対して高い反応選択性を有していた。生成したポリマーは片方の末端にCDを有した珍しい化合物であり、このCDが重合活性部位であることがわかった。重合活性部位であるα-CDにエステル結合で変形可能な置換基を導入することで、重合活性を制御することに成功した。CD置換基の光異性化に伴う変形で重合活性が変化することから、CD空孔へのモノマーの取込みが制御されていることが示唆された。また、金コロイドを鋳型にCDを球状に会合させCDナノ粒子を合成した。CDナノ粒子は鋳型の金がある状態ではラクトンに対して重合活性を示さなかったが、金を抜き出して中が中空の粒子にすると重合活性が発現した。このことから、ナノ粒子の内部の空間が重合活性の発現に重要であることを見出した。得られたナノ粒子は、その表面からポリマー鎖が生長していた。そのため、重合反応の前後で、ナノ粒子の大きさが変化していた。このことは原子環力顕微鏡(AFM)にて観測した。さらに、この表面にポリマー鎖を有するCDナノ粒子にα-CDを添加したところ、表面のポリマー鎖はロタキ-サン構造を形成した。ロタキサン構造の形成により、ナノ粒子の大きさはさらに大きくなった。さらに、モノマー再添加による再重合反応が可能となることが分かった。
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