本年度は、QCD相転移を考慮した状態方程式を超新星爆発の2次元磁気流体計算に組み入れた。その際、高密度の状態方程式の不定性などを考慮し、相転移密度や真空のエネルギーの効果、さらにはハドロン相における非圧縮率や断熱指数をパラメトリックに取り扱った。磁場や回転の効果も同様、パラメトリックに様々な状況を考慮した。初期条件としてはNomoto & Hashimoto 1988の現実的なpresupernovaモデルのうち最も重いモデルと軽いモデルの両極端な2モデルを用いている。 最終目標としては元素合成を行い相転移の有無による影響を見積もることであったが、 1.非常に現象論的な状態方程式を用いているために結果として得られる温度の信頼度が非常に低い 2.パラメトリックサーチによる多くのモデルを取り扱っているために、全てのモデルにて衝撃波が外に伝播するまで計算を追うことが困難 3.ニュートリノの影響を取り込まなければ、そもそも爆発数秒後に得られる元素合成の結果は実際のもの大きく異なってくる。 という3つの難点のためにこの段階での元素合成は行えていない。が、これは当初の予定通りである。 変わりに、この段階(ニュートリノの影響が効かない爆発後100ミリ秒後まで)でスポットを当てたのは重力波である。重力波は大質量星の崩壊バウンス直後が、もっともその放出が見込めるためである。重力崩壊型超新星爆発において相転移の重力波に対する影響を考慮した研究は無く、得られた結果はPhysical Review Dに投稿、受理されることになった。我々の結果によると多くて1割程度の影響が振幅にでることがわかった。 本年度の研究により、おおよそどのような状態方程式、初期条件、磁場や回転がダイナミックスにどのように効いてくるかわかった。現在はハドロン相の状態方程式を現実的なものを採用し、より信頼度の高い計算結果を準備している。(ここで"準備"という表現をしたのは、その結果をもとにポストプロセス的に元素合成計算を行うためである。)
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