研究概要 |
本研究の実施施設において文書による同意の得られた20〜45歳の、正常月経周期を有し、卵巣嚢腫、不妊症、子宮付属器周囲癒着症のいづれかの診断により開腹手術または腹腔鏡手術を施行する患者75名から末梢静脈血10ccを採取し血清を分離、使用まで-80℃保存した。 月経周期別に分類し、月経周期の一致する子宮内膜症性嚢胞患者5例、子宮内膜症を有しない不妊症または子宮付属器周囲癒着症患者5例の血清を尿素により変性させた後サンプルを調製し、プロテインチップシステムPCS4000を用いて血清蛋白質の発現プロファイルの解析を行ったところ、IMAC30チップ(金属イオンチップ)において3773,23650,40321,68234,76373,80783,92207(M/Z)、Q10チップ(陰イオン交換チップ)において4600,15260,16023(M/Z)、CM10チップ(陽イオン交換チップ)において5900,8973,15343,16020,22730,45283,83943(M/Z)のピークにおいて、子宮内膜症群と非子宮内膜症群の間に有意な発現差を認めた。 また、文書による同意の得られた、正常月経周期を有し開腹時所見において子宮内膜症を認めなかった子宮筋腫患者10例及び子宮内膜症性嚢胞を有する患者35例からそれぞれ正所性子宮内膜、内膜症性嚢胞壁を採取しホルマリン固定後パラフィン包埋標本を作製、免疫染色を行った。 PI3K-Aktシグナル経路において、Aktの下流に位置する転写因子であるFox01の発現が、正常子宮内膜に比し異所性子宮内膜において亢進していた。一方Fox03aの発現は、正常子宮内膜に比し異所性子宮内膜において低下していた。 同じくAktの下流に位置するリン酸化p70S6キナーゼの発現は、正常子宮内膜、異所性子宮内膜の間で変化が認められなかった。
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