研究概要 |
本年度は、これまでリン酸化部位の認識に用いてきた金属配位子相互作用だけでなく他の相互作用を検討した。現在認識可能であるリン酸基周辺の側鎖と、様々な置換基を有する人工ペプチドプローブ分子とのリン酸基以外との相互作用による親和性の向上をねらった。そこでモデルプローブ分子としてこれまでに知見のあるアミノ酸型認識ユニットDpaTyr 2Znを用いた(J.Am.Chem.Soc.,128,10452-10459(2006))。モデルペプチドには親和性の向上をねらいヒスチジンやシステイン、アスパラギン酸を含んだものをFmoc固相合成法によりミニライブラリーを作成し、評価・検討をおこなった。 この検討の過程において、DpaTyr2Znの置換基にクロロアセチル基をもつプローブが特定のアミノ酸配列(Cys-(Ala)n-Asp-Asp-Asp-Asp)と親和性を有するだけでなく非可逆的に共有結合標識が可能であることを偶然発見した。このように認識による選択性と共有結合反応をカップリングさせることで、他の親和性を持った種の共存下、特定アミノ酸配列のみを認識した化合物種へと収束可能になるかもしれない。またさらに詳細な検討をおこなった結果、モデルペプチドの空間配置の最適化により水中における通常の分子間反応と比較して反応初速度が約1500倍を越え、非常に速くラベル化可能であることが明らかになった。 これまで、人工低分子と短鎖ペプチド配列との組み合わせによる、非可逆な標識手法はあまり存在していない。そのため、このような配列をタンパク質タグとして用いることで、新規のタンパク質標識手法を提案できるのではないかと考え、現在研究を進めている。
|