研究概要 |
本年度は、地球の中心を通過してくる地震波も取り扱えるよう、準球座標系差分法プログラムを拡張することを主目的として研究を行った。地球中心は解の特異点である上、準球座標系差分法ではこれまで横方向(θ方向)の格子間隔が不変な均質格子を用いていたため、計算の安定性の制約から、計算領域は地球半径r=1000km以浅に限られていた。 計算の安定性の問題は、動径方向に格子サイズの異なる複数の格子を接続した不連続格子(=マルチドメイン)を用いることで解決した。今回は下層の格子サイズを上層の格子サイズの3倍粗くした格子を6層接続し、計算領域の下端をr=9kmまで広げることに成功した。この成果は日本地震学会2006年度秋季大会、および九州大学情報基盤センター広報(全国共同利用版,6巻3号)で発表した。さらに地球中心における特異点問題を回避するため、中心付近のみデカルト座標系を適用するスキームを開発し、均質地球モデルや球対称地球モデルについて地球中心を通過する波も安定に計算できることを確認した。この成果はAGU 2006 Fall Meetingで発表した。 また現在、南極大陸氷床上にアレイ観測点を展開する計画が進められている。本年度は、この計画がどの程度地球深部構造の解析に寄与するか調べるため、準球座標系差分法を用いた数値実験も行った。南極付近のCMB上に箱型の不均質構造を与え、震源としてフィジー諸島付近で多発する深発地震のメカニズムを与えた場合、南極大陸上でどのような波形が観測されるかシミュレーションした。結果としてCMB上の不均質の影響を受けた波形の異常は南極大陸で最も強く観測されることが分かり、深発地震を使って南極周縁の深部不均質構造を調べる際に、南極が最良の観測場所となることが示唆された。この成果は2006 Western Pacific Geophysics Meeting、および月刊地球(28巻9号)で発表した。
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