1)骨髄局所におけるアンジオテンシンII(Ang II)-Ang II type 1受容体(AT1R)系の、動脈硬化病変形成への影響を解明する。 骨髄移植によりApoE欠損マウスの骨髄をGFP陽性ApoE欠損マウスまたはGFP陽性AT1R・ApoEダブルノックアウトマウスのものに置換し、これらの二系統の骨髄移植モデルマウスにAng IIを投与し動脈硬化病変形性形成の程度を比較することで、骨髄におけるAng II-AT1R系の作用を検討した。結果は血管系にAT1Rを有するマウスでも骨髄のAT1Rを欠損させるとAng II投与による動脈硬化の促進が抑制された。さらに動脈硬化病変への骨髄由来細胞の動員は、AT1R陽性細胞に多く見られた。これらの結果は、従来の血管壁に存在するAng II-AT1R系だけでなく、骨髄細胞に存在するAng II-AT1R系も、動脈硬化病変形成に関わることを示す結果である。 2)AT1R陽性骨髄細胞とAT1R欠損骨髄細胞の性状の差異の検討 上記の結果から、AT1Rの有無により末梢血中の骨髄由来細胞(白血球)の性状に差があることが考えられたため、FACSを用いて、その性状を検討した。その結果、白血球の総数に差は無かったが、動脈硬化にかかわりの深いMac-1陽性細胞は、有意にAT1R陽性骨髄細胞に多く存在した。すなわち、骨髄に存在するAng II-AT1R体系は単球やマクロファージ系の細胞の分化に関与することで、動脈硬化病変の形成に関与することが考えられた。
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