液晶は、秩序構造と動的特性を併せ持つ機能性ソフトマテリアルである。π共役分子に液晶性を付与することで、高い配向秩序と異方的な光・電気特性を有する新しい有機半導体材料となることが期待される。本研究ではオリゴチオフェン分子に着目し、一次元的なキャリヤ輸送を指向して新規カラムナー液晶性オリゴチオフェンを開発した。両末端に扇状のアルキル部位を導入したオリゴチオフェン分子を有機金属カップリング反応を用いて合成した。得られた化合物のサーモトロピック液晶性を偏光顕微鏡観察、示差走査熱量測定およびX線回折測定により調べたところ、ヘキサゴナルカラムナー液晶相を示すことが明らかとなった。これらの化合物は、オリゴチオフェン誘導体においてカラムナー液晶相を発現した初めての例である。紫外可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトル測定の結果から、液晶状態においてオリゴチオフェン分子はカラム軸方向に沿って積層し、H会合状態を形成しているものと推察された。カラムナー液晶相の発現には、オリゴチオフェンコアの分子間π-π相互作用およびコアとアルキル部位のナノ相分離が重要であると考えられる。また、サイクリックボルタンメトリーによりオリゴチオフェンの電気化学的特性を評価したところ、酸化、還元ともにレドックス活性を示すことがわかった。
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