『哲学の歴史 第8巻』「IV 一九世紀フランス哲学の潮流」では、かなりまとまった分量の論稿として、「スピリチュアリスム」・「反省哲学」などと称される、十九世紀フランス哲学の主だった流れについて哲学的・哲学史的に論じた。この領域は従来の研究では空白地となっている傾きがあったが、それ自体としても、20世紀現代思想への影響・連続性という観点からも、掘り下げた研究か必要とされる領域であった。 リクール研究に関しては、これまで主にその前期・中期の仕事に重点をおいて研究を進めてきたが、先の2008年2月の〈フランス哲学セミナー〉において、リクールの後期・晩年の思想に直接切り込む仕方で、「《Representance》のエピステモロジー-リクール『記憶、歴史、忘却』第二部と歴史認識の問題」と題する報告発表を行った。一般的な知名度という点では、後期リクールの仕事は、前期・中期のそれに比して圧倒的によく知られ読まれており、その意味では、『記憶、歴史、忘却』のような今日的アクチュアリティの高い後期の仕事について専門家として論稿・解釈を提出することには、前期・中期についての専門色の強い研究とはまた違った種類の、一定の意義があろう。 リクールは1965年に著した『解釈について-フロイト試論』によってラカン派から大変な顰蹙を買い、激しい議論が起き、またそのことでラカンは『エクリ』(1966年)の編集出版を決意することになった。〈哲学〉と〈精神分析〉との関係、ということについては様々な立場から様々な見解が出されているが、この問題への一つのアプローチとして2008年3月にフロイト思想研究会ミニシンポジウム「夢と精神分析」において、「Reahty/Remains of the day -夢と外的世界の実在性」と題する発表を行った。
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