研究課題
波長30μm帯中間赤外線カメラMAX38の開発をおこなってきた。本装置はこれまで明らかにされていない惑星形成初期の原始太陽系円盤の研究を飛躍的に進めると期待される。MAX38は昨年度にその大部分の機能が立ち上がりファーストライト観測に成功した。本年度は試験観測により明らかになった問題点の改善をおこない、そのプラットフォームである東京大学アタカマ望遠鏡の立ち上げも行った。25μm以上の中間赤外線波長では光学フィルタに適した透過材が存在しない。そこで本研究では金属薄板に十字形状の穴を開けた中間赤外線用メッシュフィルタを開発した。十字穴アレイの共鳴波長の電磁波のみが高い効率で透過する。開発したフィルタは最大透過率90%、分解能λ/Δλ=8を達成した。MAX38用に開発中の赤外線検出器コントローラは画像信号のアナログ処理部に問題を抱えていた。本年度はボードの設計を見直し、再製作することで低ノイズの画像を取得することに成功した。地上中間赤外線観測では時間変動する背景放射成分を取り除くためにチョッピング観測を行う。MAX38は装置内の冷却部に軽量の振動鏡を設置し、ピエゾにより駆動することで高速なチョッピング観測を実現する。開発中の冷却振動鏡は低温下でピエゾのストロークが著しく減少し、十分な振り幅を確保できない問題があった。そこで低温においてもストロークの低下が少ないピエゾ材質を実験により探った。結果、ピエゾの材質をハード材に変更することで冷却による低下を減らせること見つけ、ストロークを従来の4倍に増加させることに成功した。2008/6には国内で試験中の東京大学アタカマ望遠鏡にMAX38を取り付け、実際の観測を模擬した試験を行った。その後、望遠鏡をチリに輸送し、現地での建段作業に立ち会いながら、MAX38の搭載に向けた準備を行った。MAX38は2009年夏より現地にて天文観測を開始する予定である。
すべて 2008
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The Astrophysical Journal 677
ページ: 1120-1131
The Astrophysical Journal 685
ページ: L75-L78