本研究は、ファイトプラズマが引き起こす「篩部壊死」や「生殖生長から栄養生長に転じる形態変化」などの病徴にはプログラム細胞死(PCD)が関与しているとの推測のもと、PTGS (post-transcriptional gene silencing)などの手法やファイトプラズマのゲノム情報を利用して、この詳細を解明することを目的としている。加えて、得られた知見にもとづき、ファイトプラズマゲノムにコードされると推定される新規エリシターの同定や、PCD経路を用いたファイトプラズマ耐性植物の作出を行う予定である。 この研究の1年目として、まずはファイトプラズマが引き起こす病徴においてPCDが関与しているかどうかを確認した。PCDに関連するといわれている現象にはいくつか報告例があり、それらの検証を行ったところ、ファイトプラズマ感染植物の篩部組織におけるカロースの蓄積が明確に認められた。カロースの蓄積はPCDによってのみ起こる現象ではないが、今回の例ではファイトプラズマが局在している篩部組織においてのみカロースの蓄積が認められたことから、ファイトプラズマによって引き起こされたものであると考えられる。加えて、PCDに関連するといわれているそのほかの現象についても確認を行ったところ、そのうちいくつかについては確認されたことから、ファイトプラズマの病徴においてはPCDが関与している可能性が強く示唆された。
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