本研究は、ファイトプラズマが引き起こす「篩部壊死」や「生殖生長から栄養生長に転じる形態変化」などの病徴にはプログラム細胞死(PCD)が関与しているとの推測のもと、PTGS(post-transcriptional gene silencing)などの手法やファイトプラズマのゲノム情報を利用して、この詳細を解明することを目的としている。加えて、得られた知見にもとづき、ファイトプラズマゲノムにコードされると推定される新規エリシターの同定や、PCD経路を用いたファイトプラズマ耐性植物の作出を行う予定である。 昨年度までの研究により、ファイトプラズマが引き起こす病徴においてPCDが関与していることが確認された。これを踏まえ、本年度はファイトプラズマが持つエリシターの同定を試みた。ファイトプラズマはタンパク質膜輸送系を介して分泌タンパク質を宿主の細胞質に分泌していることから、これらの分泌タンパク質はエリシターの有力な候補である。全ゲノムが解読されているOY-Mファイトプラズマは、30以上の分泌タンパク質をゲノム中にコードすることが分かっている。そこでこれらの分泌タンパク質を1つずつウイルスベクターに導入し、検定植物であるNicotiana benthamianaにおいて発現させ、PCD誘導能を調べた。その結果、いくつかの有力な候補を得ることができた。これらはこれまで報告のない新規のエリシターである可能性が高い。
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