本研究では、紫外光照射による石英系平面光波回路作製手法により、デバイスの高性能化と集積化の研究を行うものである。紫外光により描画される導波路の一つの利点は、屈折率の分布構造を容易に形成可能であることである。その分布構造を利用した機能デバイスとして、位相マスク法によるSampled Gratingを内包する導波路の作製を行った。まず単純なSampled Grating内包導波路が作製可能であることを示した後に、多点位相シフト法を導入した高密度Sampled Gratingを実現した。多点位相シフト法とはデバイスサイズを大きくせずに、Sampled Grating反射スペクトルのチャネル間隔を高密度化する技術である。 近年光デバイス応用に注目されているカーボンナノチューブ(CNT)について、全光型スイッチへの応用について研究を行った。CNTは、その可飽和吸収特性が主に注目され、デバイスへと応用されてきたが、本研究ではCNTの高い光学非線形性を用いることを目指した。10mm長のCNTを塗布した上部クラッドの無い石英系平面導波路を用いて、非線形ループミラー構成にて、20%の分岐比変化を得た。この結果は、純粋にCNTの光学非線形性のみに起因するものではなく、熱や偏波の影響も含むと考えられる。 さらに、取り扱いが困難であるCNTを光デバイス応用と相性の良い方法で容易に取り扱う手法を研究した。CNTはナノスケールで、またファンデルワールスカにより絡まり合うために、非常に取り扱いが困難である。我々は、CNTを分散した溶媒に90度にカットした光ファイバから光を入射することで、光ファイバ端のコア部周辺のみにCNTを位置選択的に堆積させることを実現した。
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