研究概要 |
幅広い分類群の現生陸生脊椎動物の骨格形態とそれらの動物種のロコモーションの研究から、以下に挙げる2つの関係を明らかにした.これらの結果は、陸生動物がどのような姿勢を選択して移動運動を行なっているのかについて理解を深めるだけでなく、絶滅動物の姿勢の復元にも応用できるものである. 1.肩帯の位置と肋骨の強度の関係 羊膜動物の前肢は体幹に筋で留められているため、化石動物ではその位置の復元をすることは難しい.前肢で体重支持を行なう四足歩行動物では、体幹は左右の前肢から前位肋骨まで伸びる腹鋸筋によって吊り下げられている.現生動物の肋骨を二次元モデルで応力解析した結果、四足歩行動物の幅広い分類群において、肩甲骨の直下にある肋骨は胸郭の中でも鉛直方向の力に対して相対的に高い強度を示した.四足歩行動物では肩周辺で胸郭の幅が狭くなる傾向を力学的な観点から初めて説明した.また、肋骨の鉛直方向の力に対する強度を測ることは化石動物の前肢位置を復元する上で大きく貢献すると考えられる.(Annual Meetings of SVP, Ottawaにてポスター発表:投稿準備中) 2.立脚期における肘関節角度と肘頭のオリエンテーションの関係 四足歩行動物は、立脚期で上腕三頭筋の働きにより肘関節を伸展させることによって関節角度をある狭い範囲に保ち、姿勢を維持する.上腕三頭筋は前腕の肘頭突起に停止し、前腕の軸に対する肘頭のオリエンテーションは動物種によって様々である.幅広い動物群の骨格及びロコモーションの研究結果から、立脚期に保たれる肘関節の角度は、肘頭突起に作用する上腕三頭筋のテコを最大にする角度として説明できることが明らかとなった.これは化石動物の姿勢を復元するのに大きく役立つと考えられる.(日本古生物学会にて口頭発表、ICVM8にて発表予定:投稿準備中)
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