本研究は初期発生におけるRNA制御マカニズムの一端を明らかにすることを目的としてアフリカツメガエル胚神経板に発見するRNA結合タンパク質XRKHD3の機能解析を行った。注目すべきことにXRKHD3の3'UTRには800塩基にわたり脊稚動物間で高度の保存された領域(3'LCUと命名)が存在したことから、XRKHD3はRNA結合ドメインにより標的RNAを制御するとともに、自身のmRNAも3'LCUを介して何らかの因子に制御されることが予想され、RNA制御を理解するうえで非常に興味深い因子である。まずXRKHD3の発生過程における役割を調べるためXRKHD3の過剰発現、機能損害実験を行った結果、XRKHD3は神経板の前後軸形成と中胚葉形成に影響を与えることが明らかになった。次に3'LCUの機能を明らかにするため、GFPレポーター解析を行った結果、3'LCUが存在するとmRNAの分解促進と翻訳促進の両方をうけることが明らかになった。このときXRKHD3を共注入するとレポーターmRNAの分解が促進されたことから、XRKHD3は3'LCUを介して自身のmRNAの分解に働くことが示唆される。これらの結果からXRKHD3はmRNAの分解に働くことを予想し、次に標的RNAの探索のためマイクロアレイによるディファレンシャルスクリーニングを行った。標的RNAの同定は進行中であるが、現在までの所、XRKHD3はFGFシグナルを制御していることがあきらかとなっている。以上の結果から、XRKHD3は3'LCUにおける制御によって自身のmRNA量と翻訳量が決定され、それによって決定されたXRKHD3のタンパク質量に従ってFGFシグナル量が制御されて正常な前後軸形式や中芭胚葉形成を促すと考えられる。
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