研究課題
ショウジョウバエの脚の分化に関わるホメオドメイン転写調節因子、Aristaless(Al)とClawless(Cll)の協奏的なDNA結合様式を明らかにするため、Al-Cll-DNA三者複合体の構造解析を行っている。これらの転写調節因子は単独ではDNAに対する結合力は弱いが、共存する条件下で特定のDNA配列に対し強く結合することが示されている。AlとCllにはヒトゲノム中にホモログが存在しており、それぞれCART1、HoxllL1と呼ばれている。これらのタンパク質のDNA結合様式はAl、Cllと同様であることが示されているので(CART1とHoxllL1、AlとHoxllL1、CART1とCllでも共存条件下で同じ塩基配列のDNAに強く結合)Al-Cllと同時にCART1-HoxllL1の複合体解析も行った。ホモログ間でのアミノ酸配列の相同性を指標とし、それぞれのタンパク質に関して、N末端とC末端の長さを調節した複数の発現コンストラクトを作成した。大腸菌の系で大量発現させたタンパク質を用いEMSAによるDNA結合力の測定を行い、その中で、正常に複合体を形成することが確認できたコンストラクトを用い、三者複合体の結晶化実験を行った。結晶化スクリーニングの結果、PEG3350を沈殿剤とする条件でAl-Cll-DNA三者複合体、CART1-HoxllL1-DNA三者複合体の結晶がともに得られた。放射工施設Photon FactoryにてX線回折実験を行い、それぞれ最高分解能が3.0Å(Al-Cll-DNA複合体)、2.1Å(CART1-HoxllL1-DNA複合体)の回折データを取得することに成功した。Al単独での結晶構造をモデルとした分子置換法によって、それぞれの複合体の結晶構造を決定した。得られた三者複合体の結晶構造をそれぞれ右図に示す。三者複合体の認識配列である5'-TTAATTAATTG-3'のうち始めの7塩基がAl(CART1)によって、後半の5残基がCll(HoxllL1)によって認識されることが明らかになった。興味深いことに、複合体形成に伴う各ホメオドメインの立体構造変化や、タンパク質間の相互作用などは観察できなかった。両者が存在する条件で示す強固なDNA結合様式は、DNAを媒介とした三者間の相互作用が重要であることが示唆された。
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